にゃごにゃ小学校

本家(HP)作製のネタ、あるいは記事にするには寸足らずな話を日記兼用でアップします。

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1962年 アメリカ 107分
1/21(日) NHK BS ハイビジョンで21:00から放映をハイビジョン録画、1/28(日)鑑賞。

 正直言って、障害者を取り上げた作品というのはあまり好きではありません。
 製作関係者の思い入れが強すぎるのか、どうしても肩に力が入っていて、また押しつけを感じることが多く、しんどいからです。多くの場合、理解のない社会やまわりの人々に対する怒りや被害者意識が込められていて、ついていけないのです。

 この映画もその意味で、もし見るのがしんどいタイプの映画なら、さっさと切り上げようと思って観始めました。
 しかし、結論から言って、この作品は、予想もしていなかった感動を与えてくれました。



 しんどい、という意味では、確かに最初、やはりしんどいのです。家族は教師としてやってきたサリバンのことを理解できずに邪魔ばかりしますし、そもそも目も見えない、音も聞こえない少女に、1から何かを教えていくなどという作業自体、考えるだにしんどいし、実際、観ているだけでも根気のいる作業です。
 だいたい、何をどう教えればいいのか、見当もつきません。
 ところが、そうした引いた気持ちは、ある場面から吹きとんでしまいます。

 家族はヘレンのしたいままにさせ、それが愛情だと思っています。そのため、しつけらしいしつけを受けてない彼女は、半ば野生動物のような状態です。いや、野生動物なら自らの命を守るためにさまざまな試練を受け、耐えることを身につけていますが、彼女にはそれもありません。
 感情の赴くままに、なんの自己管理もなく、思い通りになることだけを求めることがその生き方です。
 その、ランチのシーンはある意味衝撃的です。彼女は、食卓を囲んで食事をとる両親、兄、そして叔母のテーブルの回りをぐるぐると歩き回り、食事している人の皿に手を突っ込んでは、素手で口に運び、むしゃむしゃと食べます。家族は、彼女のしたいままにさせ、自分達は気にも留めず、ヘレンなど存在しないかのような態度でめいめいの話題で会話を続けています。
 ここでサリバンは立ち上がり、「雇われ人のくせに生意気な」という家族の言葉をはねのけ、皆を食堂から追い出すと、ヘレンと壮絶な格闘を始めます。彼女が拒んでも拒んでも、素手で口に運ぼうとするたべものを叩き落とし、スプーンを握らせ、それで食べさせようとします。思い通りにならず、苛立つ彼女は、腕を振り回してサリバンを打ち、スプーンを投げ出し、素手で食べ物を摂ろうとします。意地でもサリバンに従う素振りは見せません。
 この互いのすさまじいやりとりは、客観的にはそれまでの接触とは比較にならない「しんどさ」ですが、しかし、ここは観ていて少しもしんどくありません。ただただ、感動します。

 結局この映画は、障害者に対する社会の無理解を糾弾しているのではなく、また障害者に同情しているのでもなく、深い愛情を持ちながらも、なにがこの不幸な娘に必要なことかを理解できない家族の同情とあきらめ、そして無知による、ヘレン・ケラーに対する態度に強い問題提起をしています。
 そこには、私たちがついつい抱いてしまう、こうした障害者や不幸を抱えた人たちに対する、薄っぺらで安っぽい同情やあわれみは微塵もありません。しかし、その行動は、サリバンの強い信念とヘレンに対する愛情に裏打ちされたものなのです。
 この映画、子供を躾けることもできずにスポイルし、どんどんだめな大人を生産している、いまの日本の親たちにこそ見せるべき映画です。

 それにしても、教師のアニー・サリバンを演じたアン・バンクロフトはもちろんですが、ヘレン・ケラーを演じたパティ・デュークの演技が素晴らしい。一分の隙もなく、また強烈な迫力で、この野性時代のヘレンを演じ切ります。調べてみると、バンクロフトの主演女優賞とともに、助演女優賞をアカデミー受賞していました。当然でしょう。

 ちなみに、この執拗にサリバンのしつけを拒むヘレンの姿は、黒澤明監督の「赤ひげ」に出てくる少女に良く似ています。若い医師は売春宿から救い出された彼女になんとか薬を飲ませようとしますが、心も病んでいる彼女は執拗に薬の入った匙をはねのけます。若い医師から匙を受け取って飲ませようとする赤ひげの薬も何度もはねのけながら、最後にはおとなしく薬を飲む場面が感動的ですが、「奇跡の人」が1962年、赤ひげが1965年の製作ですので、もしかしたら黒澤監督は、この映画に影響を受けているかもしれません。

 蛇足ながら、日本では多くの場合、「奇跡の人」というのはヘレン・ケラーのことだと勘違いしているようですが、英語のタイトル、The Miracle Workerからわかるように、この奇跡の人とはサリバンのことです。

 映画は、ヘレンが「言葉を覚える」ということの意味を理解し、自分を取り巻く世界に興味を示すとともに、そのことに気づかせてくれたサリバンの愛に気づくところまでのストーリーですが、この映画はこれで満点だと思います。
 2月には新しい版のDVDも出るようですし、未見の方にはぜったいのお薦めです。


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