にゃごにゃ小学校

本家(HP)作製のネタ、あるいは記事にするには寸足らずな話を日記兼用でアップします。

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 公開から遅れること約一週間、文化の日の前日の11/2に、レイトショーで観て来ました。21:40開始で、終了は零時 をまわるので、盛況というような状況でありませんでしたが、それでもいかにも映画通という雰囲気の大人びた観客が、そこそこ席を埋めていました。

 このところ、わりとクリント・イーストウッド監督の映画を観る機会が多く、彼の才能については疑いを持たないにゃごにゃですが、とりわけ今回の映画にはうなりました。ひとことでいって、イーストウッド監督の『円熟』がはっきりと現れているからです。

 映画に、たっぷり調味料をかけてないと物足りない人には、この作品の本当の味はわからないと思います。それゆえ、盛り上がりに欠けるとか淡々とした映画だとかいう感想も出てくるのでしょう。しかし、この映画は、いい意味で非常に均質、俗にいえばアラのない、トーンに一貫性のある映画です。そして、個々の素材の味が素晴らしい。化学調味料の味になれた舌にそのよさを味わえといっても、土台無理な映画です。



 戦闘シーンに迫力がない、という感想もあったようですが、渦中にある兵士の感覚は、主観的なものなので、どのような視点で戦場に身を置くかで、印象はまったく変わるでしょう。ただ、実際に当時の戦場に今の機材を持ち込んで撮影したとして、もっと激しい絵になったかどうかは怪しいと思います。
 結局のところ、余計な思い入れや演出を排し、非常にリアルに撮影していると思います。これに比べれば、名作のプライベートライアンにも、調味料の匂いがしてきます。

 印象的なのは、戦場の残酷さから目を背けていないでいながら、近年の戦争映画にありがちな「グロ」が見られないことです。その意味で、激しい戦闘の場面で、砲撃に飛ばされ、手がちぎれて地面に落ちていても、それはそうした現実があるというだけで、それ以上の衝撃を受けるような画像にはなっておらず、観ていても楽です。その点は、正直ほっとしました。

 映画でも日本兵が夜間に現れ、米兵を襲撃するシーンがありましたが、証言によると、日本兵は「やりたい放題」といわしめるほど神出鬼没で、海兵隊員たちにとって、恐怖の的だったようです。そうした恐怖についても、事象としてはとりあげていましたが、必要以上に演出することをしていません。それでいて、見落としてもいないのです。監督の手腕には驚きを禁じ得ません。

 ひとつ、この映画がいかにリアルかということを表すシーンを紹介すると、映画のメインにもなっている例の摺鉢山への星条旗の掲揚。この写真、私は昔、初めて見たとき、ちょうど日露戦争の二〇三高地を陥落させた時のようなイメージで捉えていました。つまり、高台の上に陣地を張る日本軍に対して突撃し、とうとう占領し、その勢いそのままに旗を突き立てていった、という図です。おそらく、キャンペーンに使われた当時のアメリカでも、ほとんどの人はそういうふうに思っていたと思います。
 実際には、朝飯の終わった後のひとときに、命令ではあるのですが、「山の上に旗を上げようや」みたいな感じで、ふもとから登山よろしくぞろぞろと上がり、そしてポール代りの長い棒を見つけ出して、おもむろに旗をそれに結んでいく、といったもので、決して勇敢なものでも輝かしいものでもありません。少なくとも旗を掲げるという行動自体はそうでした。
 このあまりに見事なイメージと現実のギャップが、実にうまく生きています。そして、それは古今東西、いたるところで起きている、思い込みと現実のギャップでもあります。

 ところで、見ての通り、英雄に祭上げられた3人の実際の写真を紹介しています。上から、ジョン・ブラッドリー、 レイニー・ギャ グノン、アイラ・ヘイズです。
 中でももっとも悲劇的な末路を辿ったアイラ・ヘイズ、映画の中では、アルコールに溺れて死んだことになっていますが、いっしょにゲームをしていたインディアン仲間とのいざこざがあって、そのときに殺された、という説もあるようです。

 ちなみに、エンドクレジットの後の『硫黄島からの手紙』の予告編、これは父親たちの星条旗をさらに上回る、素晴らしい作品である予感。そりゃ、アメリカ人のイーストウッドが、構想を拡げて日本側からの映画も撮ろうと思ったわけですから、『父親たちの星条旗』よりつまらない映画になることは、少なくともないはずです。これは、たまらなく楽しみです。

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コメント

おじゃまします・・・

にゃごにゃさん、こんにちは。
ワタシも先週この映画みてきました。
良かったです・・細部に渡って。
だから、第二部も期待してます。

> 映画に、たっぷり調味料をかけて
>ないと物足りない人には、この作品
>の本当の味はわからないと思います

アメリカでは、イマイチ“入り”が
悪いとか・・・
アメリカ人は楽しくない映画はどうも
ダメらしいですよ。だけど、第二部が
どう判断されるかワカリマセンが
2月のアカデミー賞は確実??
イーストウッド・・監督さんとしても
一流なんですけどね・・・ボソボソ


現在進行形?

スナッチャーさん、早速のコメントありがとうございますm(__)m。

>> アメリカでは、イマイチ“入り”が
>> 悪いとか・・・
イラクなどを考えると、「現在進行形」と言えなくもないですしね。

それと、第二次大戦で負けてから、一応日本は戦争から解放されましたが、アメリカにとっては、それに続く悲惨な朝鮮戦争、ベトナム戦争への序曲でもありますから、ある意味、私達がミッドウェー海戦の大敗を見るのに通ずる部分があるのではないでしょうか。

うーん、ぜんぜん外してたりして(^^;;)。

調味料か~

これ、かなり的を射た表現だと思います。なるほど。
イーストウッド作品は、余計な一切を削ぎ落としたような潔さがあって好きなのですよ。シーンひとつ取っても無駄がない。
そういう意味では、確かに『プライベート・ライアン』には調味料の匂いがプンプンします。これはよーくわかります。(笑)

それにしても、アイラ・ヘイズ氏を演じたアダム・ビーチって本当にご本人にソックリですよね。驚きました。
あのエンドロールは反則ですよ。私、ボロ泣きしちゃいました。(;_;)

TBさせて頂きます♪

小夏さん

いつもながら、小夏さんの記事も力こもってましたねー。小夏さんの「イチオシパワー」は、確実に観客動員を押し上げるでしょう。

だけど、ほんとに観に行ってこいよ、とみんなにいいたくなる映画でしたよね。

TBありがとうございました。さっそくTB返しさせていただきました。

硫黄島からの手紙では、絶対小夏さんより先にいくぞーっ!(無理かな)

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父親たちの星条旗 (2006年、米)

原題: FLAGS OF OUR FATHERS監督: クリント・イーストウッド 製作: スティーヴン・スピルバーグ     クリント・イーストウッド 脚本: ポール・ハギス 音楽: クリント・イーストウッド 出演: ライアン・フィリップ     ジェシー・ブラッドフォード  

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