にゃごにゃ小学校

本家(HP)作製のネタ、あるいは記事にするには寸足らずな話を日記兼用でアップします。

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 本を買うだけ買って、読まない「積ん読(つんどく)」ではないですが、そのうち観ようと思って録画するだけしておいて、観てない映画が結構あります。このKTもその一つ。先日、やっと観られました。

 KTとは、元韓国大統領で、ノーベル平和賞受賞者の金大中氏のこと。映画は2002年に阪本順治監督のメガホンで撮られたもの(2002年当時の大統領が金大中氏)ですが、映画で取り上げている「金大中事件」は、1973年8月8日に東京のホテルで起こっています。当時、韓国の野党指導者だった氏が、何者かに拉致され、姿を消して、五日後にソウルの自宅近くで解放された事件です。
 氏は、当時は朴正煕大統領の地位を脅かす政敵として知られ、戒厳令下の祖国に戻ることができないまま日米を往復する、事実上の海外亡命生活を送っていました。その氏が、朴大統領の対抗勢力として、(少なくとも映画の中では)可能なかぎり行われた政権側の不正行為にもかかわらず、選挙で現職大統領に肉薄する票を獲得、当時の政権は非常な危機感を持っていたという背景があります。

 この事件によって主権を侵害された日本は、韓国に厳重抗議して国際問題に発展。拉致現場から駐日韓国大使館一等書記官・金東雲の指紋が発見されたことから、事件に対する韓国政府の国家関与は確実と見られましたが、結局は日韓双方の政治的妥協により「金東雲の個人的犯行」ということで真相はうやむやになりました。

 私は事件について、主権侵害という点での印象はそれなりに持っていましたが、最初から殺害の意図はなくて、拉致し、その後解放して、自宅軟禁状態で政治活動を封じ込めることが目的と思っていました。
 ところが、映画の解釈では、目的は最初から「暗殺」であり、思わぬ邪魔から、ホテルで、そして国外逃亡の貨物船で、殺害しようとして失敗した、ということになっています。

 当時の韓国は、軍事独裁政権で、北朝鮮と似たり寄ったりの暗黒国家でした。音楽を志す若者が、長髪にしているだけで公安やKCIA(韓国中央情報局)に逮捕され、拷問されたような情勢でした。映画でも、若い女性が反乱分子と見なされて、拷問を受け、見るも無惨な傷痕を体中につけていましたが、そうしたことはある意味当り前の状況でした。

 映画では、貨物船で、今まさに重石をつけられて海に投げ込まれようとする金大中氏、という場面がありますが、そこに自衛隊のヘリが現れて低空飛行して警告し、断念させます。これは脚色かと思いましたが、調べてみると、どうやら事実だったと知って非常に驚きました。氏自身の証言で、「船に乗るとき、足に錘をつけられた」とあります。
 実際に、事件を察知したアメリカの通報を受けた自衛隊が拉致船を追跡し、照明弾を投下するなどして威嚇したため、拉致犯は殺害を断念し釜山まで連行、解放したとされています。金大中氏自身、日本のマスコミとのインタビューで、甲板に連れ出され、海に投下されることを覚悟したときに、自衛隊機が照明弾を投下したと証言しているのです。

 金東雲・駐日韓国大使館一等書記官(本名は実は金炳賛)の指紋がホテルに残されていたことが決定的証拠になった、とは上に書いた通りですが、そのような「ドジ」を踏んだ理由についても、映画では触れています。

 映画は、日本では珍しい本格的ポリティカルアクション、とされており、確かに骨太な作品です。また上記の指紋同様、拉致されて神戸に向かう氏が、車の中で、朦朧とした意識の中「『こちらが大津、あちらが京都』という案内を聞いた」と証言したことについても、うまく材料として生かしています。
 ただ、事件に自衛隊の情報将校が直接関与している、というあたりは、どうも飛躍が過ぎて、現実味はありません。同様に、氏の行動や所在について、KCIAや日本の公安、米CIAが把握していなかったということはほとんどあり得ないし、KCIAはそれらの監視をかいくぐるための算段をして(このあたりが日韓共同の謀略説の根拠にもなるのですが)拉致を実行したはずです。

 ちなみに、その後、文世光事件といって、この事件から反朴運動が高まった日本国内での状況を受け、朝鮮総連系に唆( そそのか)された文世光(ムン・セグァン)が朴正煕暗殺を決行し、結果として大統領ではなく陸英修(ユク・ヨンス)大 統領夫人が死亡する事件がおきました。当時の日本の週刊誌は、これも朴大統領の陰謀で、愛人がいてじゃまだった夫人をわざと殺させた、などとも書き立てていて、いかに独裁政権が日本で嫌悪されていたかを物語る一つの証拠となっています。
 映画では金大中事件後に日本政府が抗議声明を発表しているあたりで終わっており、このあたりは映画にはまったく登場しませんので、念のため。

 まあそんなこんなで、一見の価値はある映画です。特に、金大中事件をよく知らない世代の人達は、一度これを見て勉強しておくといいかも知れません。

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