にゃごにゃ小学校

本家(HP)作製のネタ、あるいは記事にするには寸足らずな話を日記兼用でアップします。

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注:映画、小説ともネタバレを多数含みます


















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 小夏さんイチオシの、小説の方の「嫌われ松子の一生」を読み終えました。さすが小夏さん推薦図書だけあって、とてもおもしろかったです。

 率直に言って、とっつきはペースがよくなかった。後半は気にならなくなりましたが、この作者は、読み手のペース作りがあまりうまくないな、と思います。読者がしっかりと意識しなければならない部分をうまく強調したり、スピード感を出したいときに引き込む、あるいは逆に、じっくりと読ませたいところをペースダウンさせる、そういうメリハリがよくないのです。って、文章の苦手な私が書くのも変なんですが。
 映画の中島監督は、そのあたりを実にうまく料理していると、改めて感じました。というか、ある意味無意識に監督の視点で読んでいる自分がありました。それだけ映画にインパクトがあったということ。

 一つには、教師時代の描写が、冗長過ぎることがあると思います。それに、最初にもってくるエピソードとしては、聖人君子ヅラした校長が修学旅行の下見にかこつけて、しかも旅行業者と共謀して松子に暴行しようとするというのは、この小説のカラーからするといかにもドロドロしていやらしい。みんな、回りの先生たちはとりあえず小市民的な善人でいいじゃないですか。
(そこらあたりを、映画では、反省しているなら胸を見せなさい、と強要した教頭のセクハラにまとめてしまっており、そのセンスは秀逸。)

 ですが、松子が故郷を追われるあたり、ページでいうと上巻のまんなかあたり以降は、もう松子の世界にどっぷり。非常に引き込まれ、時の経つのを忘れさせてくれます。ですので、とっつきの悪さを感じた人も、しばし我慢して読んでみて下さい。

 全体的には、映画の方はさすがだな、と思われるシーンは多いです。これはまた次の機会に逐次書きたいのですが、一例として、小説は同棲している小説家の卵の自殺を、その友人の知らせで知る、という運びですが、映画では、松子が直接目撃します。このシーンで、ちぎれた足の靴下の親指に穴が空いている、というなんとももの悲しいカットがありますが、実は小説でも、松子が殴られたときにその靴下の穴を見るところがあるのです。しかし、それっきりで、映画のような生かし方はしていません。

 そのように、概して映画のパワフルさを再認識させられるところが多いのですが、映画より小説の方がいいと思われるところもいろいろあります。

 例えば、松子が最初にトルコ嬢の面接に行き、マネージャーに断られる場面。ここは、映画でもおもしろいのですが、そのやりとりは小説の方がはるかにおもしろい。それと、これはまあ時間の関係やら映画のカラーやらの問題でしかたないというか正しいのですが、映画では現れなかったトルコ嬢としてのトレーニングや成長のいきさつは、読みごたえがあります。
 
 印象深いのは、松子が元生徒だった龍を刑務所に迎えに行くまでの話。彼のために朝食を準備し、ビールを冷やして待ち構える彼女の心を思うと、涙なしには読めません(泣いてないけど)。それに、小説では、松子からお金をもらって龍が立ち去りますが、私はそれで十分だと思う。映画のように、せっかく待ち続けて出迎えた彼女を、二度までも殴り倒すのは、ちょっと説得力もないしやりすぎ、ひどすぎ。

 それから、終盤は、龍の心がとても丁寧に描かれています。彼が牧師に神の愛を説かれるシーンは映画でも感動的ですが、小説の方は心を揺さぶられます。その意味では、悲しく、悔悟の中にあっても、ある意味心静かな龍の心情は、物語に深みを与え、救いも与えていますが、映画では、やけになって「おれが犯人だ」といって警官を殴り飛ばします。これもちょっとはずしすぎ。

 全体として、言われるように、悲惨とか暗いとかは感じなかったです。映画を観てイメージがあったから?いや、そんなことはないと思います。映画はスタイリッシュなので悲惨でも楽しめるけど、小説は悲惨なだけで救いがない、というふうな評があり、それが私がもともとは文庫本の方を手にする気がなかった理由でもあるのですが、それは個人的にはまったく違っていると感じました。

 小夏さん、お薦めいただき、ありがとうございました。にゃごにゃは読むことができてとてもよかったです。

(といいつつ、つづく、と思う)





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