にゃごにゃ小学校

本家(HP)作製のネタ、あるいは記事にするには寸足らずな話を日記兼用でアップします。

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

 サンフランシスコから関西空港への便で、黒人の男性と隣合わせになりました。
 以下の会話は、実話です。

私「Hi」
彼「Hi。どこからだい」
私「コロラドスプリングスから。きみは?」
彼「カリフォルニアだよ」
         :
彼「実は、あすはおれの誕生日なんだ。だからオオサカに着いたら誕生日さ。」
私「おお、そうなのか。おめでとう。」
彼「ありがとう」
私「いくつになるんだい?」
彼「こんどで41さ」
私「へえ、ずいぶん若く見えるね。41には見えないよ」
彼「よくそう言われるよ」
私「家族はいるのかい」
彼「7歳の息子がカリフォルニアで待っている」
私「そうか。一緒に誕生日を祝えなくて、残念だね。」
彼「…」
         :
彼「おれはこれから、台湾に行くんだよ」
私「台湾!?大阪じゃなかったのか」
彼「そう。台湾に行って、そして貨物船に乗るんだ」
私「じゃあ君は船員なんだ」
彼「そうなんだ。4ヶ月か、もしかしたら、半年くらいの仕事になりそうだ。」
私「そうか。大変だね。海の仕事は好きなのかい?」
彼「まあね。でも、息子と一緒に住みたいよ。」
私「かわいいんだろうね」
彼「ああ、とても愛してる。かわいいやつだよ。頭もいいしね。」
         :
彼「よく寝てたね。あれだけ眠ることができればたいしたものだよ。」
私「うん。少しでも長く寝られれば、フライト時間が短くなるしね。ところで、カリフォルニアでも船員だったのかい?」
彼「いや、カリフォルニアでは家具を作っていた」
私「へえ。でも前は船員だったんだろう?」
彼「ああ。15年近く前、ちょうど湾岸戦争の頃に、中東の周辺で仕事してたよ」
私「中東!?もしかして海軍にいたの?」
彼「いや、民間人さ。」
私「そう。無事でよかったね。」
彼「ああ。おれも若かったよ。」
私「その頃は独身だった?」
彼「いや、前の妻と夫婦だった。」
私「ああ、じゃあ今は二人目の奥さんか。」
彼「そうだよ。」
私「子供はもう作らないの。一人じゃさみしいだろう?」
彼「一人でいいよ。あと二人娘がいるし。」
私「奥さんの連れ子?」
彼「そう。息子はほんとうに頭がよくてね。スポーツもできるし。鉄棒なんか、すごいんだぜ。おれでもできないような回転技をできるんだ。勉強も、おれなんかよりずっとできる。学校の先生もとても頭がいいってほめてくれるんだ。」
私「ふうん。頼もしいね。これからが楽しみだ。」
彼「だから、彼にはいい教育を受けさせたいんだ。大学までいかせてね。」
私「そのための出稼ぎでもあるんだね」
彼「ああ」
私「奥さんは働いていないの?」
彼「働いていないよ。本当はね、息子と一緒にいたいんだ。だけど、お金がいるんだ。家具工場のボスに、20ドルの時給を22ドルにしてくれないかって頼んだ。でも、絶対にだめだというんだよ。たった2ドルだぜ。それで、その仕事を辞めて、船員の学校に職探しを依頼したってわけさ。」
私「奥さんにも会いたいんだろう?」
彼「・・・。彼女はお金のことばかりさ。金、金、金、もっと金を稼いで来い、金がいる、ってね。前の女房もそうだった。2回結婚したけど、結婚はもう2回で十分だ。」
私「・・・」
彼「やつは、この頃では、おれにハグ(抱きしめること)もしてくれない。なんだか冷たいんだ。でも、おれには息子がいる。ほんとに、いますぐに会いたいよ。・・・」
私「元気出せよ。少なくとも、次の誕生日は彼と一緒に祝えるだろう?」
彼「そう、そうだね。彼のためならなんでもするさ。」
私「おれもそうだったけど、息子というのは、大人になれば、父親の苦労とか、偉さとか、自然と見えて来るもんだよ。君の息子も、いずれきっと君の気持ちを理解して、心から感謝すると思うよ。」
彼「そうかな。そうだよな。彼には本当に幸せになってほしい。」
私「君だって幸せになれるよ。こうして、はるばる家族のために仕事を求めて海外に出ていっているんだから。」
彼「・・・。おれは、まじめに生きて来たよ。盗みを働いたこともないし、人をだましたこともない。ムショに入ったことだってない。教会に行き、いつも正しく生きて来た。それなのに、息子と一緒に暮らすこともできない。女房には金がないと責められる。ほんとにさみしいよ。」
私「まじめに正しく生きることはとても大事なことだよ。世の中捨てたものじゃない。きっといいことがある。だからがんばれよ。」
彼「・・・」
私「ところで、貨物船の行き先はどこなの?」
彼「知らないんだ。仕事を紹介されたところで聞いたのは、台湾から出港するということと、4ヶ月から半年の仕事だということだけさ。」
私「船の仕事は好きなんだろう?」
彼「ああ。まあ快適だしね。」
私「プロの君にいうのは余計なことだけど、もう前ほど若くないし、体も慣れるのに時間がかかるだろうから、最初から無理して体を壊さないようにね。」
彼「だいじょうぶさ。ばりばりやるよ。」
私「うん。でもまあ、気候も違うから、徐々にね。」
         :

 そして、関空に着いた後、私は彼の差し出した手を握りしめ、別れの握手をしたのでした。

 ちょっと映画か何かみたいな人生の話を、生で聞けて、ああ、やはり世界にはいろんな生活をしている人がいるんだなあ、と実感したのでした。
 今もどこか海の上にいるであろう彼の幸せを祈らずにはいられません。

(まったく、なんて長いんだ)



コメント



なんだろう (kaier)
2005-10-16 00:31:32

なにか、読んでいて涙が出てきました。



さみしそうでした (にゃごにゃ)
2005-10-17 08:57:42

文面から伝わったかどうかわかりませんが、さみしくて落ち込んでいるのがありありでした。

アメリカ人は通りすがりや乗り合わせた人に気軽に声をかけますが、といって、あまり話し込むということも普通はないです。
彼のように身の上話を長々話すのは珍しく、よほど心細かったのかなあ、と思います。
少しでも気が紛れてくれればいいな、と思いました。



酔っぱらい来ました! (JJ)
2005-10-20 09:33:02

本当に聞きたかった話を、
久しぶりに聞けた感じがします。
一番気に入ったお土産と、コメントさせていただきます。



えっへん! (にゃごにゃ)
2005-10-20 12:35:50

>> 一番気に入ったお土産と、コメントさせていただきます。
わーい、JJさんにほめられた!
>> 本当に聞きたかった話を、
>> 久しぶりに聞けた感じがします。
というか、なんか恐縮です。

スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

Name
Title
E-mail
URL
Comment
Password
※入力しないと編集・削除ができません
 管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事へのトラックバックURL

http://questkpax.blog51.fc2.com/tb.php/370-8c020321

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。