にゃごにゃ小学校

本家(HP)作製のネタ、あるいは記事にするには寸足らずな話を日記兼用でアップします。

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

 オール・ザット・ジャズ(原題 ALL THAT JAZZ)は、私のもっともお気に入りの映画の一つだ。この映画の舞台となっているブロードウェイのショー・ビジネスについてはよく知らないし、実のところあまり興味もない。しかし、とにかくこの映画はスタイリッシュで、演出が素晴らしく、しかもセリフの一つ一つがおしゃれなのだ。
 映画館でも観たし、BSで放送されたものも録画したし、中古のLDも手に入れた。しかし、なかなかDVD化されず、残念な思いだった。それが、ボブ・フォッシーのブロードウェイミュージカル「シカゴ」の映画版がDVD化されるのに合わせ、DVDになったときは跳び上がって喜んだものだ。「シカゴ」も悪くないが、失礼ながら、私的にはオールザットジャズの足元にも及ばない。

 で、DVDになったこの作品は、映像も音響も満足いくものであったが、ひとつだけ、その字幕の訳(日本語吹替えはなし)だけは、まったくいただけなかった。
 同一の映画で、異なる翻訳家の手による翻訳については、違和感を感じることがあるのはしかたない。また、そうでなくても、この部分の翻訳、ちょっと違うなあ、と感じることはよくある。しかし、このDVDについては、ちょっと外し方がひどい。

 具体的に、何点か見てみよう。オリジナル、字幕、そして概ね直訳の三つを列挙する。

 まず、主役のジョー・ギデオンが繰り返し鏡に向かって口にするセリフ。

オリジナルIt's showtime, folks!
字幕訳ショータイムだ
直訳みなさん、ショータイムです


 ここでは、folks!と観客に呼びかけている。しかし、字幕の訳だと、自分に「さあ、始まるぞ」と言い聞かせているようなニュアンスになる。全然意味が違う。仮りに「みなさん」と呼びかけていながら、実は自分を鼓舞しているのだとしても、それは映画を観ている人が判断することであって、翻訳家が勝手に押しつける性質のものではないはず。

 それから、浮気の現場を目撃した愛人ケイトが、後日ジョーと会って、半ばヤケ気味に、彼の部屋から別の男に夕食の誘いの電話をかけるシーン。
 電話の向こうでその男は、「ちょっと驚いたよ」という。「私も驚いているの」というケイト。それを聞きつけて部屋に入ってきたジョーがいうのが下のセリフ。

オリジナルI'm a little surprised, too. Isn't that nice? Now we're all a little surprised.
字幕訳おれも驚いた。みんな驚いたわけだ。
直訳おれも驚いた。これは愉快だ。みんな驚いたわけだ。


 この、Isn't that nice?は、文字どおりniceなセリフ。これを平気で落として、このシナリオの良さが生かされると思っているのか、そのセンスを疑いたくなる。

 さらにもう一つ。ジョーが愛娘とのひとときをスタジオで過ごしているシーン。
 なぜか彼女は執拗に、ジョーが再婚しない理由を尋ねる。そのときのジョーのセリフ。

オリジナルI don't get married again because I can't find anyone I dislike enough to inflict that kind of torture on.
字幕訳もう結婚はしない。二度とあんな苦痛を相手に与えたくない。
直訳もう結婚はしない。あんな苦痛を与えたいほど嫌いな相手が見つからないからね。


 字幕訳の方がいいと思う人、手を挙げて、の世界やね、ここまでくると(笑)。
 これらは一例にすぎない、残念ながら。

 意味が通ればいい、辻褄が合えばいい、みたいな訳し方をされる例は実は少なくなく、作品の良さをスポイルしてしまっていることがよくあるが、この作品については、私の個人的思い入れを別にして考えても、おしゃれな作品であるだけに、こんな訳ではお話にならないと思うのだ。

スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

Name
Title
E-mail
URL
Comment
Password
※入力しないと編集・削除ができません
 管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事へのトラックバックURL

http://questkpax.blog51.fc2.com/tb.php/101-86add04d

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。